つかみそこねた雲が
動脈を吹きぬける
憧れは なんだか
ないものねだりに似てる
あったはずなのに
今はないような感触に
歩きまわるような
視線を落とすような
きらりとはにかむような
数粒の宝物を
つまみたいのに
つまめないような
小説や映画や絵や踊りなんかに
想いを託して
疎通できたらステキだけど
しんと哭く風に凍えないように
同じポケットに手を入れて
饒舌や沈黙や記憶や恐れをすり抜けて
体温を巡らせるんだ
『呼吸』/イトウコウスケ。